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ミューズリーを味わう

フルーツ・グラノーラに牛乳をかけたものを,朝,自転車で20km走った後に食べていた。

フルーツ・グラノーラは数社からいろいろなタイプが販売されている。

「ピーコック」ストアでカルビー社の「フルグラ」とケロッグ社の「フルーツ グラノラ ハーフ」を購入して食べ比べた結果,ケロッグ社の「フルーツ グラノラ ハーフ」の方がフルーツの割合が多く味も好みだった。

ところが,秋の風が吹き始め,暖かい食事を摂りたくなった頃から,冷蔵庫から取り出した冷たい牛乳をかけるフルーツ・グラノーラを食べるのがおっくうになってきた。

代わりに,イチゴやオレンジ・マーマレードにブルーベリーといったジャムをつけたトーストや,焼いた餅に少量の砂糖を入れた醤油をつけて食べることになった。

そんな朝食を続けていたが,寒い冬の朝といえども,たまにはシリアルを食べたくなってきた。

ただ,11月10日に,加工食品の製造には欠かせない砂糖,脂肪,塩がどのように加工食品の味や売れ行きを左右しているのか,そして,健康にどのような影響を与えているかを,詳細な取材で簡潔,明瞭にまとめたノンフィクション「フード・トラップ」マイケル・モス (日経BP) を読み,毎日のように食べていたケロッグ社の「フルーツ グラノラ ハーフ」は食べないと決めたので,代わりのシリアルがないか探していた。

そんな折,娘が「ミューズリーに豆乳をかけて食べているけど美味しいよ」と言う。

ミューズリーをウィキベディアで調べると,

「ロールドオーツ (燕麦の押麦) などの未調理の加工穀物とドライフルーツ,ナッツ,種子類などを混ぜ合わせたシリアル食品の一種」

と書かれている。

一方,グラノーラは,

「穀物加工品と,ナッツなどを,蜂蜜などのシロップ,植物油とで混ぜてオーブンで焼いたもの」

とある。

ミューズリーの中には砂糖や蜂蜜で調理されているものがあるため,加熱処理しているかどうかがグラノーラとミューズリーとの違いである。

ナッツもフルーツも好きなので,これは一度ミューズリーなるものを食せねばと「ピーコック」ストアに直行。

ミューズリーもいろいろなメーカーから,様々な種類が発売されている。

で,手にしたのはエルサンク ジャポン社の有機シリアル「ビオ ミューズリー プレミアム」という製品。

家に帰り牛乳をかけて食べる。

塩も砂糖も全く使用していないので,原材料であるレーズン,オート麦,ひまわりの種,大麦,コーンフレーク,スペルト小麦,カボチャの種,アプリコット,古代麦,アップルの味をそのまま味わうことができる。

エルサンク ジャポン社では有機シリアル「ビオ ミューズリー プレミアム」の他に,有機シリアル「ハイ ファイバー プレミアム」有機シリアル「フルーツ ミューズリー プレミアム」という製品があるので,そちらも食べてみたい。

加えて,娘愛用のクリスビーフード社の「オーガニック フルーツ ミューズリー」も試したい。

エルサンク ジャポン社の有機シリアルには「おいしい召し上がり方」として「お好みでハチミツやメープルシロップ,ジャムなどを加えて」と書かれていて,試しに,ミューズリーと一緒に購入したメープルシロップを少量加えたところ,これもまた美味しく食べることができた。

メープルシロップにホットケーキ粉さらに蜂蜜については,またの機会に。

ミューズリー

「ありふれた祈り」ウィリアム・ケント・クルーガー (早川書房)

年齢を重ねた主人公が,十代の頃に故郷で起きた事件を語るというスタイルの物語に何故か惹かれる。

本作品も,今は60歳代となった主人公が,1961年,ミネソタの田舎町で穏やかな牧師の父,芸術家肌の母,音楽に才能のある美しい姉,吃音に悩まされながら聡明な弟と平凡に暮らしていた13歳の時に起きた悲劇的な事件を語るという話。

物語は,

「あの夏のすべての死は,一人の子供の死ではじまった。
中略。
結局,それがあの夏だった。
わたしはボビー同様子供だったから,そんなことはわからなかった。
あれから四十年たつが,いまだに完全にわかったとは思えない。
あの夏の出来事について今もよく考える。
叡智の恐るべき代償について。神の恐るべき恵みについて」

で始まる。

美しいミネソタの自然の中で精一杯生きる主人公の家族と住人の人物造形が素晴らしく,まるでその町の住人になったかのような感覚を読むものに感じさせる著者の筆力には恐れ入るしかない。

家族の絆と成長の苦しみを描いた本作品は,読み終えた後に得も言われぬ至福感を感じさせてくれる。

本書の著者であるウィリアム・ケント・クルーガーは,本書と同じくミネソタの片田舎にしてアメリカの先住民であるアニシナアベ族の神話が息づく,恵みのある大自然の情景の活き活きとした描写が特徴の,元保安官のコーク・オコーナーを主人公とするシリーズを,1998年の「Iron Lake (日本でのタイトルは「凍りつく心臓」)」を第一作として,2014年の第十四作「Windigo Island」まで執筆している。

本ブログでは第二作の「狼の震える夜」を紹介している

ありふれた祈り

「猫的感覚」ジョン・ブラッドショー (早川書房)

ダイ吉が亡くなったのが2011年の2月23日,はやいもので3年10ヶ月が過ぎた。

で,猫を飼おうと思っている。

そんな折,本書を知った。

本書は11の章で構成されいて,第1章から第3章は猫の進化について触れられている。

第4章から第6章では,猫の嗅覚や触覚の科学的解説で,猫の行動や感情についての実験結果も紹介されている。

第7章から第9章は,猫と社会との関わりが述べられている。ここでは,生後三週間ぐらいまで育て方が,その猫の性格や行動を決定するという実験結果が紹介されている。また,猫の求愛活動や遊びについても言及されている。

この三つの章で描かれている内容は,猫を飼っている人には特に興味深い内容が書かれている。

第10章と第11章では,今後の猫の在り方についての考察。

そこで,猫を飼っている人,あるいは,猫を飼おうと考えている人に参考になればと,第8章「猫と飼い主たち」で「室内飼いの猫を幸せにしておくために」というコラムで書かれている内容を紹介しよう。

・歩き回れるスペースをできるだけ与える。
・目立たない場所にトイレを置く。他の猫から見られる窓際は避ける。
・可能なら,バルコニーなど,猫のために囲われた外の部分を作る。猫は新鮮な空気を必要としているわけではないが,戸外の風景,音,においは猫の興味をかきたてる。
・室内に,二種類のベッドを用意する。ひとつは床に置かれた屋根と三方に壁があるもの。例えば,横向きに置いた段ボール箱。もうひとつは高い場所に用意するべきだ。天井に近いが簡単に行け,家の入り口か窓の外がよく見える場所。すべての猫が両方を使うわけではないが,大半がどちらかにいると安心感を覚えるだろう。
・少なくともひとつは爪研ぎを与える。
・一日に何度か猫と遊ぶ。獲物に似たおもちゃでのゲームは,猫の狩りの衝動を満足させるだろう。とりわけ猫が窓から鳥を見ているなら,いっそう効果がある。猫の興味を維持するために,頻繁におもちゃを変えること。
・側面に適切な大きさの穴が開き,そこからドライフードが出る仕掛けのペットボトルで,何時間も熱心に遊ぶだろう。もっと複雑な装置も販売されている。
・新鮮な猫草を与える。多くの猫はこのカラスムギの苗を噛むのが好きだ。
・えさを与えすぎない。室内飼いの猫は,戸外に出る猫よりも肥満になるリスクがとても大きい。
・まだ猫を飼っていないなら,兄弟猫を二匹飼うことを検討しよう。二匹はいい相棒になれるだろう。
・室内飼いの猫がすでに一匹いるなら,別の猫を仲間として迎え入れる前に計画を立てておこう。一度も会ったことのない猫同士は,限られた空間を共有することに自然に適応することはできない。

そして,昨年の12月27日にキジトラの女の子が我が家に来た。

その特徴的な招き猫的ポーズから,招く猫の子「まねこ」と命名する。

猫的感覚

今年読んだ本で印象に残った作品

「本を愛しすぎた男」アリソン・フーヴァー・バートレット (原書房)
稀覯本を愛するがゆえに古本店主からだまし取る詐欺師に取材したノンフィクション物

「祝宴」ディック・フランシス(早川書房)

「ぼくと1ルピーの神様」ヴィカース・スワループ (ランダムハウス講談社)
映画「スラムドッグ弗ミリオネア」の原作

「交霊」ラーシュ・ケプレル (早川書房)
「催眠」「契約」に続く第三作目

「惜別の賦」ロバート・ゴダード (東京創元社)

「狼の帝国」ジャン=クリストフ・グランジェ (東京創元社)

「逸脱者」グレッグ・ルッカ (講談社)
ボディーガードのアティカス・コディアック・シリーズの第四作で,「暗殺者」で登場した凄腕女性殺し屋ドラマが主人公とも言うべき物語

「哀国者」グレッグ・ルッカ (講談社)
「逸脱者」の続編とも言うべき本作は,アティカスとドラマ,そして,故ナタリーの父親が,大統領首席補佐官を暗殺する物語

「回帰者」グレッグ・ルッカ (講談社)
本作品は隣人の娘が誘拐されたことに端を発した,人身売買組織との闘いの物語

「ゴーン・ガール」ギリアン・フリン (小学館)

「米中開戦」トム・クランシー&マーク・グリーニー (新潮社)
凄腕の殺し屋を主人公にした魅力的な三作品「暗殺者グレイマン」「暗殺者の正義」「暗殺者の鎮魂」の著者マーク・グリーニーとの共著である本書は,スケールの大きさと登場人物の魅力が融合されて楽しめる物語

「秘密(上)」ケイト・モートン (東京創元社)

「長い夜の果てに」バーバラ・ヴァイン (扶桑社)

「変数人間」フィリップ・K. ディック (早川書房)

「黒いダイヤモンド」マーティン・ウォーカー (東京創元社)
英国の作家がフランスの片田舎を舞台にした警察署長ブルーノを主人公とするシリーズの第三作

「これ誘拐だよね?」カール・ハイアセン (文藝春秋)

「アンダルシアの友」アレクサンデル・セーデルベリ (早川書房)

「審判」ディック・フランシス(早川書房)
競馬シリーズの第42作にして,息子アレックス・フランシスとの共著第三作の本書は,弁護士でアマチュア騎手が主人公の物語

「凍てつく世界」ケン・フォレット (ソフトバンククリエイティブ)
百年三部作の二作目にあたる本書は,1933年から1949年,つまり,第二次世界大戦をまたぐ時代を舞台に,一作目の若者たちの子どもが主人公となっている

「ブラック・フライデー」マイクル・シアーズ (早川書房)

「映画術」塩田明彦 (イースト・プレス)

「骨の刻印」サイモン・ベケット (ヴィレッジブックス)

「悪童」カミラ・レックバリ (集英社)
エリカ&パトリック事件簿シリーズの三作目である本書は一人の女性の物語で,その女性の過去と,エリカとパトリックの現在が交互に描かれる家族愛の物語

「靄の旋律」アルネ・ダール (集英社)

「ツール・ド・フランス」山口和幸 (講談社)
今年100回大会を迎えたツール・ド・フランスの歴史,仕組み,戦い方,活躍した選手がコンパクトにまとめられている

「キアズマ」近藤史恵 (新潮社)
大学に入ってひょんなことからロード・レースの魅力に取りつかれた男の物語

「黒のクイーン」アンドレアス・グルーバー (東京創元社)
「夏を殺す少女」の三年前に書かれた探偵ペーター・ホガードを主人公とする作品でプラハを舞台とする物語

「超偏愛!映画の掟」荒木飛呂彦 (集英社)

「ジュリアン・ウェルズの葬られた秘密」トマス・H. クック (早川書房) 

「暗殺-究極の否定」デイヴィッド・マレル (新潮社)

「Uボート113 最後の潜航」ジョン・マノック (ヴィレッジブックス)

「狼の震える夜」ウィリアム・K. クルーガー (講談社)

「トータル・リコール」フィリップ・K. ディック (早川書房)

「ダーク・ハーバー」デイヴィッド・ホスプ (ヴィレッジブックス)

「レッドセル」マーク・ヘンショウ (早川書房) 
アメリカと中国のスパイ戦,台湾を巡っての戦闘行為を描いた作品

「ビッグデータの正体」ビクター・マイヤー/ケネス・クキエ (講談社)

「パインズ 美しい地獄」ブレイク・クラウチ (早川書房)

「巨大訴訟」ジョン・グリシャム (新潮社)

「雪の女」レーナ・レヘトライネン (東京創元社)
本書はフィンランドの女性警察官マリア・カッリオを主人公とするシリーズの第四作目にして翻訳第一弾

「ぺナンブラ氏の24時間書店」ロビン・スローン (東京創元社) 

「約束の道」ワイリー・キャッシュ (早川書房)
元野球選手で今は犯罪者の金を奪って闘争している男。彼には二人の娘がいて,彼女達は母親が亡くなり施設で暮らしている。二人の娘に何もしてやれなかった男は娘達との絆を取り戻すべく,施設から二人を連れ出す。二人の訴訟後見人の元刑事は父親と姉妹を探し始めるが,もう一人,男に復讐を誓う凶暴な男も三人を追跡する。という物語で,人物造形,アメリカの南部の風景描写,小さなエピソードが心憎いほど物語に彩りを添えている

「暗殺者の復讐」マーク・グリーニー (早川書房)
暗殺者グレイマン・シリーズの第四作は,グレイマンと同程度の能力を持つ男との対決を描いた作品で,モサドの女性目標決定官といった魅力的な人物が登場し,600頁の大作を最後まで飽きさせずに読ませる

「特捜部Q 知りすぎたマルコ」ユッシ・エーズラ・オールスン (早川書房PB)
特捜部Qのシリーズ第五作

「犯罪心理捜査官セバスチャン」M. ヨート & H. ローセンフェルト (東京創元社)
個性的な登場人物で楽しませてくれる

「たとえ傾いた世界でも」トム・フランクリン&ベス・アン・フェンリイ (早川PB)
「ねじれた文字,ねじれた路」で楽しませてくれた著者が夫人と共著で上梓したのが本書。1927年のアメリカ南部を襲った大洪水を舞台に描いた人物ドラマ

「ハリー・クバート事件」ジョエル・ディケール (東京創元社)
時には緻密,時には乱雑,時にはもたもた,時にはスピーディーと全体の統一感はないものの,プロット,登場人物,展開が何とも言えぬ魅力に溢れた物語

「妻の沈黙」A. S. A. ハリスン (早川書房)

「その女アレックス」ピエール・ルメートル (文藝春秋)
ストーリー展開の意外性が魅力の物語

「最重要容疑者」リー・チャイルド (講談社)
ジャック・リーチャー・シリーズの第17作で,テロリストの車にヒッチハイクで同乗したリーチャーの活躍を描く物語

「さよなら,ブラックハウス」ピーター・メイ (早川書房)
ひろいものの作品で,衝撃的なラストの事実には胸が熱くなった

「時のみぞ知る」ジェフリー・アーチャー (新潮社)
アーチャー初期の傑作「ケインとアベル」を彷彿とさせる何代にもわたる家族の物語の第一部は,1920年から1936年までの第二次世界大戦前のイギリスを舞台にした話

「ゴーストマン 時限紙幣」ロジャー・ホッブズ (文藝春秋) 
斬新なストーリー展開

「もう年はとれない」ダニエル・フリードマン (東京創元社)
86歳の元刑事が主人公の物語

「容疑者」ロバート・クレイス (東京創元社)
犬と人の熱い物語

「フード・トラップ」マイケル・モス (日経BP)
加工食品の製造には欠かせない砂糖,脂肪,塩がどのように加工食品の味や売れ行きを左右しているのか,そして,健康にどのような影響を与えているかを,詳細な取材で簡潔,明瞭にまとめたノンフィクション

「黒い瞳のブロンド」ベンジャミン・ブラック (早川書房)
古きよき時代のハードボイルド小説が堪能できる

「ヒトラーのオリンピックに挑んだ若者たち」ダニエル・ジェイムズ・ブラウン (早川書房)
1人のコックと8人の漕手で競うボートという競技の持つ神秘性,優美さ,残酷さを,1930年代という第二次世界大戦前のアメリカ西部ワシントン大学を舞台に,ボート部員と家族を主人公に余すことなく描いた傑作ノンフィクション物

「ボビー・フィッシャーを探して」フレッド・ウェイツキン (みすず書房)
チェスの天才少年を子に持つ父親の物語

「殺し屋ケラーの帰郷」ローレンス・ブロック (二見文庫)
切手に関する蘊蓄が多いが,相変わらず歯切れが良く人間味溢れるケラーの思考と行動に面白さを感じる

「ゴースト・スナイパー」ジェフリー・ディーヴァー (文藝春秋)
最新の無人飛行機とアメリカ政府の殺人部署を舞台にした物語

「猫的感覚」ジョン・ブラッドショー (早川書房)
近日中に紹介予定

「ぼくは物覚えが悪い」スザンヌ・コーキン (早川書房)
近日中に紹介予定

「ぺナンブラ氏の24時間書店」ロビン・スローン (東京創元社)

巻末で解説している米光一成氏の言葉を借りれば,本書は,

古書店,電子書籍,グーグル,暗号解読,愛書家,データ・ビジュアライゼーション,活版印刷,フォント,活字,アーカイブ,キンドル,コンピュータ,書体,RPG,アップル,ハッカー,ファンタジー

などといったキーワードのいくつかに興味がある人が読むと,とても楽しく読むことが出来る作品である。

失業中の青年がふとしたきっかけで働くことになった<ミスター・ペナンブラの二十四時間書店>

しかし,この書店,何かおかしい。

ほとんど客は来ないし,店の奥にはグーグルも知らない本があり,それらの本は少人数の常連客に貸し出しているのだ。

この奇妙な書店は何のためにあるのか,店主の目的は何か,常連客は何をしているのか。

主人公はローグ(ならず者)として,グーグラーの女性キャットをウィザード(魔法使い)に,友人でソフトウェアの会社を経営するニールをウォリアー(戦士)にして謎を解き明かす旅に出発する。

この冒険譚,どこまでが実際にあることなのか,どこが作者の頭の中で創造されたことなのか曖昧であるがゆえに,微に入り細を穿った描写がたまらなくいい。

ぺナンブラ氏の24時間書店

「パインズ 美しい地獄」ブレイク・クラウチ (早川書房)

この先,どのような展開が待ち受けているのだろうかと胸をどきどきさせながら読み進む本に出会ったのは久しぶりである。

気が付くと男は川の近くの青々とした芝生に横たわっていた。

立ち上がろうとすると膝ががくんと折れて盛大に尻もちをつき,肋骨に激痛がはしる。

服のポケットを探るがお金も身分証も携帯電話もない。

何らかの事故に遭ったことはわかるが,自動車事故なのか,犯罪に巻き込まれたのか,あるいは,自らが犯罪を犯したのか?

ある家の前で気を失い病院に担ぎ込まれる。

翌日病院で目を覚まし,やや記憶を取り戻した男はシークレット・サービスの捜査官であることを思い出す。

男は何の目的で片田舎にある,この美しき町に来たのかを解明するために,地元の保安官や住人の助けを借りようと行動し始める。

しかし,この美しい町パインズは何かおかしい。

男が外部との連絡をとろうとすると邪魔をし,男が町を出ようとすると何らかの手段で阻止する。

はたして,この美しき町パインズにはどのような秘密があるのか。

どのような悪意が潜んでいるのか。

著者が用意した物語の結末は,それまでの物語の雰囲気とはやや異質な気がしないでもないが,まさに巻を置く能わずと言うべき作品に仕上がっている。

パインズ 美しい地獄

「ビッグデータの正体」ビクター・マイヤー/ケネス・クキエ (講談社)

本書のタイトルにある「ビッグデータ」とは,著者によれば『小規模ではなしえないことを大きな規模で実行し,新たな知の抽出や価値の創出によって,市場,組織,さらには市民と政府の関係などを変えること』である。

そして,ビッグデータは三つの大変化をもたらすという。

第一の変化は「ビッグデータは限りなくすべてのデータを扱う」ということ。

無作為抽出の少ないデータでは察知できなかったものが,デジタル技術の普及により,従来とは比べ物にならないほどの膨大なデータを扱うことができるようになった。

第二の変化は「量さえあれば精度は重要ではない」ということ。

少ないデータでは,なるべく正確な数字で表わす必要があったが,データ量が多くなれば厳格な精度は現実的ではないし,好ましいことでもない。

絶えず変化するデータが大量にある場合,何もおいても完璧な正確さを目指す必要はなくなる。

第三の変化は「因果関係ではなく相関関係が重要になる」ということ。

人間は因果関係に執着するが,因果関係に執着しないのがビッグデータの世界,重要なのは「理由」ではなく「結論」,データ同士に何らかの相関関係が見つかれば新たなひらめきが生まれる。

本書は全十章からなる。

第一章では,そもそもビッグデータとは何か,どのような変化をもたらすものか,本書の構成はどのようになっているかを解説。

第二章「すべてのデータを扱う」では第一の変化を,第三章「精度は重要ではない」では第二の変化を,第三章「因果から相関の世界へ」では第三の変化を詳述している。

第二章では「N=全部」の出番の具体例として,日本の国技相撲が取り上げられている。

千秋楽で7勝7敗の力士と8勝6敗の力士が当たった場合,7勝7敗の力士が勝つ可能性がおよそ25%高くなっていた。さらに,問題の取り組み後,再び同じ顔合わせを迎えたとき,1回目に負けた力士が勝つ可能性が,3回目,4回目の同じ顔合わせのときよりも3〜4倍高くなっていることが判明したという。

第三章では正確さから乱雑さへと軸足を移す動きが強まっている例として,写真投稿サイト「フリッカー」を取り上げている。

「フリッカー」には2011年現在60億枚の写真が蓄積されているが,固定された分類や事前のカテゴリー分けはされていない。そのかわりに,写真をアップロードするときに「タグ」を付けることになっている。タグは誰でも自由に作成して付けることができ,このタグのおかげでUウェブ上の膨大なコンテンツが簡単に閲覧できるようになった。

第五章では相関分析の有効性実証例として,世界最大の小売りチェーン店「ウォルマート」での実話をあげている。

一人の客がどの商品を購入し,いくら使ったのかだけでなく,買い物カゴに一緒に入っていたものは何か,来店したのは何時か,その日の天気はどうだったかまで徹底的に調べ上げた結果,ハリケーンの到来が近づくと,懐中電灯の売り上げが伸びただけでなく「ポップターツ(朝食によく食べるお菓子)」の売り上げも増加しているという事実が判明,そこで,嵐が近づいた際には,店頭のハリケーン対策用品コーナーにポップターツも大量に陳列,売上増大につながった。

以下,第五章「データフィケーション−「すべてのもの」がデータ化され,ビジネスになる時代」第六章「ただのデータに新たな価値が宿る−ビジネスモデルの大変化 その1」第七章「データを自由に利用する企業−ビジネスモデルの大変化 その2」と続き,第八章「リスク−ビッグデータのマイナス面−『1984』の悪夢は実現するか」では,ビッグデータによってプライバシーのリスクが高まる実例として,AOLが過去の膨大な検索データをユーザー名やIPアドレスといった個人情報は数字だけの識別子に置き換えて一般公開した結果,ニューヨークタイムズは「60代の男性」「健康にいいお茶」「ジョージア州リルバーン」「造園業」といった検索語を組み合わせて,ユーザー番号「4417749」がジョージア州リルバーン在住の未亡人テルマ・アーノルドさんであることを突き止めてしまい,この記事をきっかけに激しい抗議が巻き起こり,AOLの関係者が処分される事態にまで発展したという。

新しいテクノロジーには必ず陽と陰がある。

著者は第九章「情報洪水時代のルール−ビッグデータ時代のガバナンスとは」で,その問題について言及する。

最後に,第十章「ビッグデータの未来−ここまで述べてきたことの「まとめ」」で著者は言う。

『人間の素晴らしいところをアルゴリズムやコンピュータチップに訊いても無駄だ。絶対に答えられない。なぜならそれはデータとして取りこめないものだからだ。それは「そこにあるもの」ではなく「そこにないもの」なので。空白だったり,歩道の亀裂だったり,暗黙だったり,まだ考えてもいないことだったりする。ビッグデータのおかげで実験は速くなったし,多くの手掛かりを採ることが可能になった。これだけ利点がそろっていればイノベーションも多く生まれそうだ。ところが発明のひらめきはデータには語れない。まだ存在していないのだから,いくらデータ量を増やしたからといって,裏付けや確証が得られるものではないのだ。発明の才が人類進歩の源泉である以上,ビッグデータの世界であろうと,独創性,直感,知的野心といった最も人間らしい特質を育むことが大切である』

ビッグデータの正体

「ダーク・ハーバー」デイヴィッド・ホスプ (ヴィレッジブックス)

著者はボストンで最も伝統ある大手法律事務所のパートナーで,本作が処女作。

原稿を読んだ父親が友人の文芸エージェントに送ることを助言。

文芸エージェントに原稿を送って一週間もたたないうちに出版が決定する。

文芸エージェントの読みどおり,本作品は,バリー賞の2006年最優秀新人賞の候補にノミネートされた。

物語は通勤電車の中のさりげない会話で始まる。

そして,その通勤電車はテロにより爆破される。

通勤電車爆破テロの一年後,ボストンの港に若い女性の死体が浮かんでいるのが発見される。

その女性は主人公が勤務する法律事務所のアソシエイト弁護士であった。

ときあたかもボストンでは娼婦連続殺人事件が発生しており,その手口から同一犯人による殺害事件とみなされる。

捜査に当たった捜査チームは,連続殺人事件殺の手口とは微妙に異なる点に着目,殺された女性弁護士の友人である主人公に疑惑の目を向ける。

一方,主人公は殺された同僚の女性弁護士が手がけていた訴訟事件を担当,調査するうちに隠された陰謀に気付く。

はたして,警察から犯人と目された主人公は,自らの潔白を証明できるのか,また,訴訟事件の裏に秘められた陰謀を暴くことが出来るのか。

複雑ではあるが混乱することなく読み進むことが出来るテンポよいストーリー展開,新人離れした筆力と人物造形のうまさで,最後まで一気に読むことが出来た。

現役弁護士が書いた作品ということで,ジョン・グリシャムを代表とするリーガル・サスペンスのような物語と思われるかもしれないが,本作品は,それに加え,警察小説,心理サスペンス,活劇の要素が見事にブレンドされた魅力あるものに仕上がっている。

2007年には第二作「Innocence」が本国で出版されたようだが,残念なことに翻訳されていない。

ダーク・ハーバー

「変数人間」フィリップ・K. ディック (早川書房)

フィリップ・K. ディックの作品は玉石混交である。

長編には,「虚空の眼」「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」「タイタンのゲーム・プレーヤー」のような傑作もあれば,「アルベマス」「ザップガン」のような箸にも棒にもかからない駄作もある。

長編に比べると短編は安心して読むことの出来る作品が多い。

「アジャストメント」「トータル・リコール」に続く,早川書房のフィリップ・K. ディック短編傑作集第三弾の本書には,

「Days of Perkey Pat (パーキー・パットの日々) 1963年」
「Sales Pitch (CM地獄) 1954年」
「The Indefatigable Frog (不屈の蛙) 1953年」
「The Eyes Have It (あんな目はごめんだ) 1953年」
「The Alien Mind (猫と宇宙船) 1981年」短編集初収録
「Shell Game (スパイはだれだ) 1954年」
「Misadjustment (不適応者) 1957年」短編集初収録
「A World of Talent (超能力世界) 1954年」
「Paycheck (ペイチェック) 1953年」
「The Variable Man (変数人間) 1953年」

の10編がおさめられている。

殆どの作品は既読であるが,いずれの作品も楽しく読んだ。

収録されている10編の中では,超能力者の世界を描いた「Misadjustment (不適応者)」,超能力者と反能力者の出会いがテーマの「A World of Talent (超能力世界)」,映像的アクションが秀逸な「Paycheck (ペイチェック)」,過去から来た予測不能な男を主人公とする「The Variable Man (変数人間)」の四編が特に印象的であった。

早川書房では,この後,第四,第五,第六と短編集を刊行予定で,ディックが著した百二十あまりの短編のうち,六十編ほどが今回の6冊の短編集に収録される。

ところで,フィリップ・K. ディックに関してネットをうろうろしていたら,素晴らしいサイトに出会った。

それがここ。(文字化けする場合は,Safari のプルダウン・メニュー「編集」のテキストエンコーディングで,「日本語 (Shift JIS)」にするとよい)

このサイトの「P. K. ディック SF作品レビュー」にいくと,すべての長編と短編が懇切丁寧に解説されている。

まさに脱帽もののサイトである。

変数人間

「狼の震える夜」ウィリアム・K. クルーガー (講談社)

元保安官のコーク・オコナーを主人公とする本作は,前作「凍りつく心臓」に続くシリーズ二作目。

このシリーズの特徴でもあり,かつ,魅力的なところは,ミネソタ州の片田舎にしてアメリカの先住民であるアニシナアベ族の神話が息づく,恵みある大自然の情景を生き生きと描いているところにある。

シリーズ第二作の本書では,主人公は謎の失踪を遂げた女性カントリー歌手の父親に頼まれて,その女性を探すべく湖沼地帯深く分け入っていく。

その救出行に同行するのが,アニシナアベ族の男とその息子。

この父親と息子の間で交わされる言葉や仕草が,何とも言えない雰囲気を作っていることは勿論のこと,息子が語る寓話のような物語も神秘的で心を打つ。

追う者と追われる者それぞれの父親としての想いが交差する中,オコナーは持てる知力と体力の限りを尽くして謎の敵に立ち向かう。

人物造形,舞台,ストーリー,テンポのいずれも一級の作品で,読む者をして至福の時を過ごさせてくれるシリーズ作品であることを断言する。

ちなみに,このシリーズの原書と翻訳タイトルは以下のとおり。

第一作「Iron Lake」1998 (凍りつく心臓)
第二作「Boundaru Waters」1999 (狼の震える夜)
第三作「Purgatory Ridge」2001 (煉獄の丘)
第四作「Blood Hollow」2004 (二度死んだ少女)
第五作「Mercy Falls」2005 (闇の記憶)
第六作「Copper River」2006 (希望の記憶)
第七作「Thunder Bay」2007 (血の咆哮)
第八作「Red Knife」2008 (未訳)
第九作「Heaven's Keep」2009 (未訳)

狼の震える夜

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