本当の夜をさがして
面白い本を図書館で見つけた。
書名は『本当の夜をさがして』,副題が「都市の明かりは私たちから何を奪ったのか」
原題は「The End of Night」
著者はアメリカの作家 Paul Bogard (ポール・ボガード)
出版社は白揚社

著者は言う。
「ボートル・スケールを知ったそのときから,僕は夜について学び始めた。それと同時に,少年時代に初めて本物の暗闇を体験したミネソタ州北部の湖のように,かつて訪れ,暮らし,愛した場所に思いめぐらせるようになった。気になったのは,ボートル・スケールのクラス1に該当する場所が,まだ国内に残っているかどうかだった。はたしてアメリカ本土の四十八州には,まだ自然の闇が残されているのだろうか? 言い換えれば,こういうことだ−この国ではすべての場所が光に汚染されてしまったのだろうか?」
「僕はその答えを見つけようと心に決めた。一番明るい夜から一番暗い夜へ,おなじみの公共照明で華やかに照らされた都市から,クラス1の暗さがまだ残っているかもしれない土地へと,旅をする決意をしたのだ。旅の途中では,夜がどのように変貌を遂げたのか,それがどんな意味をもつのか,僕たちに何ができるのか,そもそも何か行動すべきなのかといった疑問について考え,記録していくつもりだ。とくに理解を深めたいのは,人工照明が否定のしようのないほど素晴しく,美しくさえありながらも,依然として多くの代償と懸念をもたらす危険性をはらんでいることだ」
「旅の出発地には,NASAの衛星写真で世界一明るい光を放っているラスベガスや,光の都パリがふさわしいだろう。それからスペインを訪れて「霊魂の暗闇」を体験し,マサチューセッツ州にあるウォールデン池を訪ね,「森の生活ウォールデン」の著者ソローを偲びたい。暗闇の価値を押し広め,光害がもたらす脅威への関心を高めようと日々努力を続けている科学者,医師,活動家,作家たちに会いに行く予定だ。夜間の人工灯とがん発生率を初めて結びつけた疫学者,光害規制を求める世界初の「ダークスカイ」団体を設立した元天文学者,未知なるものの必要性を説く聖職者,夜に渡りを行う鳥をさまざまな都市で数えきれないほど救ってきた活動家−このような人たちを通じて,本書の物語を進めていきたいと思う」
何とも胸がわくわくする書き出しであろうか。
ちなみに「ボートル・スケール」とは,アマチュア天文家のジョン・ボートルが2001年に考案した,夜空の明度を段階的に表すための光害基準で,最も明るい空がクラス9,最も暗い空がクラス1に分類される。
本書の構成は九段階に分けられた「ボートル・スケール」にしたがって九つの章で構成されていて,「ボートル・スケール」のクラス9である「都心部の空」を章のタイトル「星月夜から街灯へ」で語る。
以下,
クラス8「都市部の空」は「二都物語」
クラス7「郊外と都市部の境」は「光は目をくらませ,恐怖は目を開かせる」
クラス6「明るい郊外の空」は「体,眠り,夢」
クラス5「郊外の空」は「暗闇の生態系」
クラス4「田舎と郊外の境」は「夜と文化」
クラス3「田舎の空」は「ひとつになろう」
クラス2「真に空が暗い典型的な土地」は「可能性を示す地図」
クラス1の「光害が一切ない素晴しい土地」は「いちばん暗い場所」
という章名がついている。
図書館から借りてきたばかりのため,まだ最初の章「星月夜から街灯へ」を読んだだけであるが,翻訳者の上原直子さんがうまいのか読みやすく,三十年ほど前に訪れたラスベガスの記憶や,今は亡き友人と一緒にモーターサイクルで北海道を一周したとき,夜空に広がる天の川を見た時の記憶などがよみがえってきて,心地よい気分を味わいながら読み進むことができている。
書名は『本当の夜をさがして』,副題が「都市の明かりは私たちから何を奪ったのか」
原題は「The End of Night」
著者はアメリカの作家 Paul Bogard (ポール・ボガード)
出版社は白揚社

著者は言う。
「ボートル・スケールを知ったそのときから,僕は夜について学び始めた。それと同時に,少年時代に初めて本物の暗闇を体験したミネソタ州北部の湖のように,かつて訪れ,暮らし,愛した場所に思いめぐらせるようになった。気になったのは,ボートル・スケールのクラス1に該当する場所が,まだ国内に残っているかどうかだった。はたしてアメリカ本土の四十八州には,まだ自然の闇が残されているのだろうか? 言い換えれば,こういうことだ−この国ではすべての場所が光に汚染されてしまったのだろうか?」
「僕はその答えを見つけようと心に決めた。一番明るい夜から一番暗い夜へ,おなじみの公共照明で華やかに照らされた都市から,クラス1の暗さがまだ残っているかもしれない土地へと,旅をする決意をしたのだ。旅の途中では,夜がどのように変貌を遂げたのか,それがどんな意味をもつのか,僕たちに何ができるのか,そもそも何か行動すべきなのかといった疑問について考え,記録していくつもりだ。とくに理解を深めたいのは,人工照明が否定のしようのないほど素晴しく,美しくさえありながらも,依然として多くの代償と懸念をもたらす危険性をはらんでいることだ」
「旅の出発地には,NASAの衛星写真で世界一明るい光を放っているラスベガスや,光の都パリがふさわしいだろう。それからスペインを訪れて「霊魂の暗闇」を体験し,マサチューセッツ州にあるウォールデン池を訪ね,「森の生活ウォールデン」の著者ソローを偲びたい。暗闇の価値を押し広め,光害がもたらす脅威への関心を高めようと日々努力を続けている科学者,医師,活動家,作家たちに会いに行く予定だ。夜間の人工灯とがん発生率を初めて結びつけた疫学者,光害規制を求める世界初の「ダークスカイ」団体を設立した元天文学者,未知なるものの必要性を説く聖職者,夜に渡りを行う鳥をさまざまな都市で数えきれないほど救ってきた活動家−このような人たちを通じて,本書の物語を進めていきたいと思う」
何とも胸がわくわくする書き出しであろうか。
ちなみに「ボートル・スケール」とは,アマチュア天文家のジョン・ボートルが2001年に考案した,夜空の明度を段階的に表すための光害基準で,最も明るい空がクラス9,最も暗い空がクラス1に分類される。
本書の構成は九段階に分けられた「ボートル・スケール」にしたがって九つの章で構成されていて,「ボートル・スケール」のクラス9である「都心部の空」を章のタイトル「星月夜から街灯へ」で語る。
以下,
クラス8「都市部の空」は「二都物語」
クラス7「郊外と都市部の境」は「光は目をくらませ,恐怖は目を開かせる」
クラス6「明るい郊外の空」は「体,眠り,夢」
クラス5「郊外の空」は「暗闇の生態系」
クラス4「田舎と郊外の境」は「夜と文化」
クラス3「田舎の空」は「ひとつになろう」
クラス2「真に空が暗い典型的な土地」は「可能性を示す地図」
クラス1の「光害が一切ない素晴しい土地」は「いちばん暗い場所」
という章名がついている。
図書館から借りてきたばかりのため,まだ最初の章「星月夜から街灯へ」を読んだだけであるが,翻訳者の上原直子さんがうまいのか読みやすく,三十年ほど前に訪れたラスベガスの記憶や,今は亡き友人と一緒にモーターサイクルで北海道を一周したとき,夜空に広がる天の川を見た時の記憶などがよみがえってきて,心地よい気分を味わいながら読み進むことができている。