好きな作家 -ロス・トーマス-
Ross Elmore Thomas (ロス・トーマス) は,1926年2月アメリカのオクラホマ州オクラホマ市に生まれる。
オクラホマ大学在学中に地元新聞社の記者として活躍。第二次世界大戦に参戦し,大学卒業後は様々な職業に就く。
彼の小説は複雑なプロットが特徴で,ともすれば難解な印象を受けるが,一癖も二癖もある魅力的な登場人物,彼らが交わす粋な会話で読ませる。
どこかで読んだことがあるようなストリー展開,聞いたことのあるような話といったこととは無縁な,まさに,ロス・トーマスでしか味わうことが出来ない物語は,一度,その魅力にとりつかれると,翻訳された作品の全てを読破したくなること必定である。
ただ,残念なことに,作品の多くは絶版で,書店で手に入れることが出来るのは「冷戦交換ゲーム」「暗殺のジャムセッション」「女刑事の死」の3冊のみで,残りの作品を読もうとすれば,図書館で借りるか,古書を探すしかない。
手に入れることが出来る作品の中では「女刑事の死」がお勧め。気に入れば,「五百万ドルの迷宮」「神が忘れた町」「欺かれた男」の3作を。

「女刑事の死」
自動車の爆破事故で死んだ女刑事の謎を解明すべく故郷に帰った兄,真相を探るうちに明らかになったのは妹の私生活と,たった一人の親友をはじめとする地元の人間関係であった。昔ながらの変わらない顔を見せる故郷の風景描写を交えつつ描かれる絡み合った人間模様は,本書を余韻のある印象深い作品に仕上げている。
「五百万ドルの迷宮」
この作品はトーマスの傑作の一つであると断言しよう。テロの専門家に舞い込んだ仕事,それはある人物を香港に亡命させること。そこで,彼は数人の仲間を集め仕事にとりかかるが,そこから,五百万ドルをめぐって様々な攻防が繰り広げられるというストーリーその物も複雑で小気味よく展開されるが,それ以上に5人の登場人物の描写が素晴らしく,ここまで個性的な人物を描き切る著者の筆力には脱帽するしかない。
「神が忘れた町」
何者かの罠で刑務所に入った元最高裁判事と娘婿の元弁護士が命を狙われ,彼等は逃亡者に隠れ家を提供して市の財政を賄っている町へ向かい,そこで女市長と警察署長をしている男に会う。こうして,女市長の妹夫婦を巻き込んでの策略が巡らされるわけだが,実は内部に敵と通じ合う人間がいるのである。また,元最高裁判事と弁護士の命を狙う犯人と女市長,警察署長とは浅からぬ因縁があるなど登場人物の関係も複雑で,一層この小説を興味深くしている。
「欺かれた男」
ロス・トーマスの25作目の本書が彼の最後の作品となった。政治資金調達のエキスパートである女性と,彼女のボディーガードとなって真相を暴く元軍事情報部の大佐が主人公の本書は,ロス・トーマスらしい魅力溢れる個性的な登場人物に捻りのある展開,そして,ユーモラスな会話満載の物語で,小説の醍醐味を充分を味わうことができる。
ロス・トーマスは1995年12月に肺癌で亡くなる。
<マック・マッコークル&マイク・パディロ登場作品>
1966年「The Cold War Swap - 冷戦交換ゲーム」(ハヤカワ・ポケットミステリ1044)
1967年「Cast a Yellow Shadow - 暗殺のジャムセッション」(ハヤカワ・ポケットミステリ1827)
1969年「The Backup Men - クラシックな殺し屋たち」(立風ミステリー)
1990年「Twilight At Mac's Place - 黄昏にマックの店で」(ミステリアス・プレス文庫109)
<フィリップ・セント・アイヴズ登場作品>
1969年「The Brass Go-between (未訳)」
1971年「Protocol for a Kindnapping (未訳)」
1971年「The Procane Chronicle - 強盗心理学」(立風ミステリー)
1974年「The Highbinders (未訳)」
1976年「No Questions Asked (未訳)」
<アーティー・ウー&クインシー・デュラント登場作品>
1978年「Chinaman's Chance - 大博奕」(立風書房)
1987年「Out On The Rim - 五百万ドルの迷宮」(ミステリアス・プレス文庫136)
1992年「Voodoo, Ltd. - 獲物」(ミステリアス・プレス・ブックス)
<独立長編作品>
1967年「The Seersucker Whipsaw (未訳)」
1969年「The Singapore Wink - 恐喝 シンガポール・ウインク」(立風ノベルズ)
1970年「The Fools In Town Are On Our Side (未訳)」
1972年「The Pork Choppers - ポークチョッパー 悪徳選挙屋」(立風ノベルズ)
1973年「If You Can't Be Good - 可愛い娘」(立風ノベルズ)
1975年「The Money Harvest - 悪魔の麦」(立風ノベルズ)
1979年「Yellow Dog Contract (未訳)」
1979年「The Eights Dwarf - 八番目の小人」(ミステリアス・プレス文庫2)
1981年「The Mordida Man - モルディダ・マン」(ミステリアス・プレス文庫6)
1983年「Missionary Stew (未訳)」
1984年「Briarpatch - 女刑事の死」(早川ミステリ文庫HM309-1)
1989年「The Fourth Durango - 神が忘れた町」(ミステリアス・プレス文庫103)
1994年「Ah, Treachery - 欺かれた男」(ミステリアス・プレス・ブックス)
オクラホマ大学在学中に地元新聞社の記者として活躍。第二次世界大戦に参戦し,大学卒業後は様々な職業に就く。
彼の小説は複雑なプロットが特徴で,ともすれば難解な印象を受けるが,一癖も二癖もある魅力的な登場人物,彼らが交わす粋な会話で読ませる。
どこかで読んだことがあるようなストリー展開,聞いたことのあるような話といったこととは無縁な,まさに,ロス・トーマスでしか味わうことが出来ない物語は,一度,その魅力にとりつかれると,翻訳された作品の全てを読破したくなること必定である。
ただ,残念なことに,作品の多くは絶版で,書店で手に入れることが出来るのは「冷戦交換ゲーム」「暗殺のジャムセッション」「女刑事の死」の3冊のみで,残りの作品を読もうとすれば,図書館で借りるか,古書を探すしかない。
手に入れることが出来る作品の中では「女刑事の死」がお勧め。気に入れば,「五百万ドルの迷宮」「神が忘れた町」「欺かれた男」の3作を。




「女刑事の死」
自動車の爆破事故で死んだ女刑事の謎を解明すべく故郷に帰った兄,真相を探るうちに明らかになったのは妹の私生活と,たった一人の親友をはじめとする地元の人間関係であった。昔ながらの変わらない顔を見せる故郷の風景描写を交えつつ描かれる絡み合った人間模様は,本書を余韻のある印象深い作品に仕上げている。
「五百万ドルの迷宮」
この作品はトーマスの傑作の一つであると断言しよう。テロの専門家に舞い込んだ仕事,それはある人物を香港に亡命させること。そこで,彼は数人の仲間を集め仕事にとりかかるが,そこから,五百万ドルをめぐって様々な攻防が繰り広げられるというストーリーその物も複雑で小気味よく展開されるが,それ以上に5人の登場人物の描写が素晴らしく,ここまで個性的な人物を描き切る著者の筆力には脱帽するしかない。
「神が忘れた町」
何者かの罠で刑務所に入った元最高裁判事と娘婿の元弁護士が命を狙われ,彼等は逃亡者に隠れ家を提供して市の財政を賄っている町へ向かい,そこで女市長と警察署長をしている男に会う。こうして,女市長の妹夫婦を巻き込んでの策略が巡らされるわけだが,実は内部に敵と通じ合う人間がいるのである。また,元最高裁判事と弁護士の命を狙う犯人と女市長,警察署長とは浅からぬ因縁があるなど登場人物の関係も複雑で,一層この小説を興味深くしている。
「欺かれた男」
ロス・トーマスの25作目の本書が彼の最後の作品となった。政治資金調達のエキスパートである女性と,彼女のボディーガードとなって真相を暴く元軍事情報部の大佐が主人公の本書は,ロス・トーマスらしい魅力溢れる個性的な登場人物に捻りのある展開,そして,ユーモラスな会話満載の物語で,小説の醍醐味を充分を味わうことができる。
ロス・トーマスは1995年12月に肺癌で亡くなる。
<マック・マッコークル&マイク・パディロ登場作品>
1966年「The Cold War Swap - 冷戦交換ゲーム」(ハヤカワ・ポケットミステリ1044)
1967年「Cast a Yellow Shadow - 暗殺のジャムセッション」(ハヤカワ・ポケットミステリ1827)
1969年「The Backup Men - クラシックな殺し屋たち」(立風ミステリー)
1990年「Twilight At Mac's Place - 黄昏にマックの店で」(ミステリアス・プレス文庫109)
<フィリップ・セント・アイヴズ登場作品>
1969年「The Brass Go-between (未訳)」
1971年「Protocol for a Kindnapping (未訳)」
1971年「The Procane Chronicle - 強盗心理学」(立風ミステリー)
1974年「The Highbinders (未訳)」
1976年「No Questions Asked (未訳)」
<アーティー・ウー&クインシー・デュラント登場作品>
1978年「Chinaman's Chance - 大博奕」(立風書房)
1987年「Out On The Rim - 五百万ドルの迷宮」(ミステリアス・プレス文庫136)
1992年「Voodoo, Ltd. - 獲物」(ミステリアス・プレス・ブックス)
<独立長編作品>
1967年「The Seersucker Whipsaw (未訳)」
1969年「The Singapore Wink - 恐喝 シンガポール・ウインク」(立風ノベルズ)
1970年「The Fools In Town Are On Our Side (未訳)」
1972年「The Pork Choppers - ポークチョッパー 悪徳選挙屋」(立風ノベルズ)
1973年「If You Can't Be Good - 可愛い娘」(立風ノベルズ)
1975年「The Money Harvest - 悪魔の麦」(立風ノベルズ)
1979年「Yellow Dog Contract (未訳)」
1979年「The Eights Dwarf - 八番目の小人」(ミステリアス・プレス文庫2)
1981年「The Mordida Man - モルディダ・マン」(ミステリアス・プレス文庫6)
1983年「Missionary Stew (未訳)」
1984年「Briarpatch - 女刑事の死」(早川ミステリ文庫HM309-1)
1989年「The Fourth Durango - 神が忘れた町」(ミステリアス・プレス文庫103)
1994年「Ah, Treachery - 欺かれた男」(ミステリアス・プレス・ブックス)