リューインの二つの人気シリーズである私立探偵アルバート・サムスン・シリーズと,失踪人課警部補リーロイ・パウダー・シリーズの両方に登場するソシアルワーカーのアデル・バフィントンを主人公にした本書は,アメリカにおける子どもの虐待,人身売買をテーマにした社会派推理小説であるが,何よりも主人公の描き方が素晴らしく,楽しく読むことが出来た。
犯人像が今一つ不鮮明な点を補って余りあるほど主人公の同僚のソシアルワーカー達が生き生きと描かれているし,主人公の恋人である私立探偵のサムスンとの会話も粋で,改めてリューインの作家としての力量に感服した。