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「日本語と日本人の心」河合隼雄/谷川俊太郎/大江健三郎 (岩波書店)

まず,河合隼雄が「日本語と日本人の心」について講演し,それを踏まえて谷川俊太郎の司会で大江健三郎と河合隼雄がメンバーになってシンポジウムを行なった記録に,後日,谷川俊太郎が自分の考えを編集者に語った内容を加えたものである。
日本語という言語の特徴や外国語との比較,日常生活における言葉の役割りや変遷といった興味深い話が随所に出てくるが,何とも刺激的なのが創造性についての議論であった。
谷川の『「創造」とはどうも純粋な日本語ではない。無から何かが生まれてくるのが創造だとどうしても考えがちであるが,現実にはそういう創造は殆ど人間技ではない。昔からある言語を使って作られた詩や小説がなぜ「創造」と呼ばれるのか』を受けて河合が『組み合わせということでもすごいのではないか。いろいろな材料をどう重ねるかとか,どう組み合わせるかというだけですごい創造だと思う』と答え,さらに大江が『人間に無意識から生まれる独創的なもの,創造的なものはない。基本的に文学表現はすべて個人の独創ではない。人間と人間の話し合いの中である言葉がしっかりと決まる瞬間がある,そういう出会いが独創性である』と引き継ぐ。
創造性の意味や本質の理解を抜きにして,人は安易に創造性があるとか無いとか口にすることを自戒しなくてはいけない。

日本語と日本人の心

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