これはなかなか衝撃的で唸らせる小説である。
ある雪の降る日に主人公と兄,それに兄の友人は小型飛行機の残骸を見つけ,飛行機の中には男の死体と共に四百万ドルの現金があった。彼らは現金を盗んでも何ら危害が及ばないと自らを納得させ家路につく。しかし,それが恐るべき悲劇の第一歩につながっていくのである。
600頁近い長篇作品にもかかわらず,一時もだれることなく最後まで緊張が持続する。一つの問題の解決が新たな別の問題を引き起こしていく。一度坂を転がり出した石は何人にも止められない。何とも重苦しいストーリーであるが,出色の出来映えの小説であることに間違いない。